2014年9月に韓国で開催された仁川アジア大会。
その会場で報道陣のカメラを盗んだとして選手団から追放、韓国側から略式起訴された水泳男子平泳ぎの冨田尚弥選手。
その後冨田選手は名古屋市内で弁明会見を開きましたが、その冒頭で
「急性ストレス反応(ASD)」
と診断されたとのことでした。
連日の報道で追及され、所属先の株式会社デサントからは解雇され、日本水泳連盟からは選手登録の停止処分。
決定的な証拠も出てきていませんが、JOCとは意見が対立しており、冨田選手の言う「謎の男」の存在も確かめられていません。
一方、各国の選手がバトミントンの試合で
「空調操作され韓国側に有利な風が吹いていた」
と不正行為の主張をしたり、スタッフが会場で賭博をしている映像が映し出されたり…問題だらけの仁川アジア大会。
そんな中疑惑の目を向けられた冨田選手、真偽のほどはわかりませんが、記者会見で
「選手への復帰は無理だと思う」
と涙ぐみながらコメントしていた彼の心情は察するに余りあります。
そんな状況であれば急性ストレス反応になるのも無理はないというもの……
ところでこの“急性ストレス反応”ってどんなものだか知っていましたか?
今回は少しその点について掘り下げてみました。
急性ストレス反応とは
“急性ストレス反応”
とは、英語名では
“Acute Stress Disorder(略称:ASD)”
と呼ばれ、強いストレスやトラウマ体験など受けたことで、その体験がフラッシュバックしたり、神経の興奮状態が継続し不眠になるなど様々な症状が引き起こされるストレス障害のことです。
日本では“急性ストレス障害”と呼ばれることのほうが多いようですが、急性ストレス反応と急性ストレス障害はどちらも同じものです。
世界保健機関(WHO)が定めた分類上の呼び名が急性ストレス反応とのことです。
症状
急性ストレス反応の症状には、前述したように
・トラウマ体験のフラッシュバックやそれによる悪夢
・不眠や不安感
・多動傾向
などがあります。
いずれも症状が続けば日常の社会生活に影響を及ぼすものばかりですね。
PTSDとは?
ストレス障害としては他に代表的なものとして
“PTSD(Post traumatic Stress Disorder)=「心的外傷後ストレス障害」”
があります。
現在では義務教育の教科書でも採用、学習されていますから、こちらは比較的有名かもしれません。
東日本大震災の後に、多くの人が発症したことも問題になりました。
PTSDとASDの違いは?
ではこのPTSDとASD、何が違うのでしょうか?
PTSDは心的外傷後ストレス障害という名の通り、「心的」に「外傷」を受けた後「ストレス障害」に陥るというものです。
つまり強いトラウマ体験などにより症状が引き起こされる、というものです。
これだけ見ると、ASDとの違いはほとんどないように思えますね。
またPTSDによって引き起こされる症状も、フラッシュバックや、悪夢、不眠等…ASDと酷似しています。
つまり発症の原因や症状においてこの2つにおける差異はほとんどないんですね。
現に医療期間でも症状の診断には同じ基準が採用されているとのことです。
では、この二つはを区別するものは何か?
それは“症状が続く期間”です。
ASDは発症から数日~一ヵ月以内で症状が治まるのに対して、PTSDは一ヵ月以降も継続して症状が現れる、という点が違いだとのこと。
ようするにASDとして発症し、一ヵ月以内に治ればASD、それ以降も症状が続くようであればPTSDに移行、といったところでしょうか。
いずれにしても辛い症状であることには間違いありませんので、冨田選手を始めASD、PTSDの患者さんが少しでも早く症状が治まるよう祈るばかりですね。
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